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TECHNOLOGY
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Cetra

農業現場を、AIが扱える意味状態へ。

Cetra(Cybernetic Environment Twin Runtime Architecture)は、農業現場で発生する作物・環境・根域・作業・判断履歴のデータを、 AIが参照・検証・提案できる「意味状態」として統合する、 CTE独自の農業インテリジェンス・アーキテクチャです。 単なるデータ蓄積やAIチャットではなく、現場で起きていることを構造化し、 判断の根拠・制約・履歴とともに扱うことで、 人とAIが協調して農業経営を支援できる基盤を目指しています。

BACKGROUND

なぜ、農業AIに「基盤」が必要なのか

農業は、生物としての成長ダイナミクス、気象との強い結合、人と機械が混在する作業チーム、 状態を部分的にしか観測できないこと、そして熟練者の暗黙知への依存—— といった、一般的な情報インフラにはない難しさを抱えています。 信頼できる農業サービスをつくるには、データを交換するだけでなく、 現場の状態を「解釈し・判断し・行動する」アーキテクチャが求められます。

近年、LLMやRAGの発展により、記録・会話・画像・表計算といった非構造データを 共通の意味表現へ写すコストは大きく下がりました。 一方で、LLM単体は農業を「統治可能(governable)」にはしません。 どのデータを根拠に、どの制約のもとで提案し、誰が承認し、結果がどうだったか—— これらを追跡・検証できなければ、現場の重要な操作をAIに委ねることはできないからです。

農業オントロジーやデータモデルといった既存の標準は、語彙や項目という「部品」を豊かに提供します。 実際、この分野にはすでに多くの蓄積があります。

建物の領域では、Brick[1]やRealEstateCore[2]が、センサー・設備・空間を共通のオントロジーで記述し、 建物を「OS的に」扱えるようにする先行例を示してきました。農業にも、同様の抽象化が求められています。 農業分野でも、センシングや圃場・施設の表現にはSAREF4AGRI[3]・FIWARE Agrifood[4]・ SOSA/SSN[5]・SensorThings[6]・NGSI-LD[7]があり、 栽培・形質・育種の領域ではAgrO[8]・Crop Ontology[9]・MIAPPE[10]・BrAPI[11]が、 農業機械の連携にはADAPT[12]・ISO 11783(ISOBUS)[13]が整備されています。 さらに、外部語彙としてAGROVOC[14]・FoodOn[15]、検証や来歴の基盤としてSHACL[17]・PROV-O[16]があります。

加えて、スマート農業におけるデジタルツイン[18]や、LLMを構造化された状態に接続するための RAG[19]・ナレッジグラフ[20]・ReAct[21]といった手法が、自然言語インターフェースの実現を後押ししています。 スマートシティをデジタルツインの連合として捉える研究[22]や、スマート農業におけるビッグデータ活用[23]も、その背景にあります。

これらはいずれも農業を表現するための優れた「部品」です。しかし、 観測・予測・提案・実行・承認・監査・学習を一つの契約として束ねるランタイムは、 これまでどの標準も単独では定義してきませんでした。Cetraは、既存の標準を置き換えるのではなく組み合わせ、 それらをランタイム契約として接続することで、 その欠けていた土台を埋めるために設計されています。

DESIGN PRINCIPLES

3つの設計思想

01

SEMANTIC STATE

農業現場を、"意味状態"として表現する

農業生産は、環境状態・根域状態・作物体状態・作業履歴・判断履歴が複雑に関係する営みです。Cetraでは、これらの情報を単なる数値や記録として扱うのではなく、「いま現場で何が起きているのか」「どの判断に関係するのか」を、AIが扱える意味状態として表現します。

なぜ必要か――生のセンサー値(気温28.4℃・湿度92%・含水率0.42)や画像解析の出力は、それ単体では判断の入力になりません。「湿度が高い」「根域がやや過湿」「灰色かびのリスク上昇」といった、意味づけと根拠を伴った状態に変換して初めて、人とAIが同じ前提で次の一手を議論できます。

02

DIGITAL TWIN

現実の農場を、予測・シミュレーションできるデジタルツインへ

画像、3Dデータ、環境センサー、作業記録、会話、栽培メモなど、現場で発生する多様な情報を統合し、農場の状態を時系列で更新します。Cetra Twinは、現状を写し取るだけの鏡ではありません。状態をモデルとして保持することで、「このまま進めばどうなるか」「この介入を行えば何が変わるか」を予測・シミュレーションし、最適化や計画の土台となります。

なぜ必要か――農業は生物的な成長・気象との結合・部分的にしか観測できない状態という難しさを抱えます。点在するデータを眺めるだけでは、原因と結果はつながらず、未来も描けません。状態を時間軸上のモデルとして保持し、各状態が「どの観測・画像・記録から導かれたか」を辿れるツインにすることで、過去の介入と結果の因果を扱い、さらに将来のシナリオを予測・比較できるようになります。

03

GOVERNED AI AGENTS

AIの提案を、安全に現場へ接続する

農業AIに必要なのは、回答を生成することだけではありません。どのデータを根拠にしたのか、どの制約のもとで提案したのか、誰が判断し、どのような結果になったのかを追跡できることが重要です。Cetraは、AIエージェントの提案を、検証・権限・履歴管理のもとで現場に接続するためのアーキテクチャです。

なぜ必要か――LLMチャットは流暢な回答を返しますが、その根拠・権限・履歴は本質的に検証できません。農薬散布や出荷のように責任と安全性が問われる操作を扱うには、提案がスキーマに適合し、来歴を持ち、権限の範囲内であることを、プロンプト頼みではなく仕組みとして保証する必要があります。

ARCHITECTURE

Cetra OS の構成

Cetra OS

現実世界のデータを意味状態空間へ写像し、その上で観測・検証・提案・監査を接続する——
この一連の土台を Cetra OS と呼び、3つのレイヤーで構成しています。

Cetra Ontology

Cetra Ontology

データの共通言語

作物、環境、根域、作業、判断、制約、履歴を共通の意味体系で扱うためのレイヤーです。現場ごとに異なる言葉や記録形式を、AIが扱える構造へ接続します。

Cetra Twin

Cetra Twin

現場状態のデジタルツイン

作物体データ、環境データ、根域データ、作業記録、判断履歴を統合し、農場の状態をデジタル空間上に表現します。現状の再現にとどまらず、予測・シミュレーション・最適化の土台となります。

Cetra Kernel

Cetra Kernel

AIエージェントの実行基盤

状態更新、検証、問い合わせ、提案、権限管理、履歴記録を担う中核レイヤーです。AIが現場データを参照し、提案し、人が判断するための安全な接続面を提供します。

AIエージェントを、現場で使える知能へ

Cetraは、ノウノウシリーズを支える技術基盤です。作物体デジタルツイン、営農記録、ナレッジ活用、栽培相談、計画、作業支援など、複数のAIエージェントが同じ現場状態を参照することで、農業経営の意思決定を支援します。

REFERENCES

[1]B. Balaji et al., “Brick: Towards a unified metadata schema for buildings,” Proc. ACM BuildSys, 2016.
[2]K. Hammar et al., “The RealEstateCore Ontology,” ISWC, 2019.
[3]ETSI, “SmartM2M; Extension to SAREF; Part 6: Smart Agriculture and Food Chain Domain,” ETSI TS 103 410-6, 2019.
[4]FIWARE Foundation, “Smart Data Models – Agrifood domain.”
[5]W3C, “Semantic Sensor Network Ontology (SOSA/SSN),” W3C Recommendation, 2017.
[6]S. H. L. Liang et al., “OGC SensorThings API Part 1: Sensing v1.1,” OGC 18-088, 2021.
[7]ETSI, “Context Information Management (CIM); NGSI-LD API,” ETSI GS CIM 009, 2021.
[8]CGIAR Platform for Big Data in Agriculture, “Agronomy Ontology (AgrO).”
[9]E. Arnaud et al., “The Ontologies Community of Practice,” Patterns, vol. 1, no. 7, 2020.
[10]P. Papoutsoglou et al., “Enabling reusability of plant phenomic datasets with MIAPPE 1.1,” New Phytologist, 2020.
[11]P. Selby et al., “BrAPI: an API for plant breeding applications,” Bioinformatics, vol. 35, no. 20, 2019.
[12]AgGateway, “ADAPT Standard.”
[13]ISO, “ISO 11783-1:2017 Tractors and machinery for agriculture and forestry.”
[14]FAO, “AGROVOC multilingual thesaurus.”
[15]D. M. Dooley et al., “FoodOn: a harmonized food ontology,” npj Science of Food, vol. 2, 2018.
[16]W3C, “PROV-O: The PROV Ontology,” W3C Recommendation, 2013.
[17]W3C, “Shapes Constraint Language (SHACL),” W3C Recommendation, 2017.
[18]C. Verdouw et al., “Digital twins in smart farming,” Agricultural Systems, vol. 189, 2021.
[19]P. Lewis et al., “Retrieval-augmented generation for knowledge-intensive NLP tasks,” NeurIPS, 2020.
[20]J. Sequeda et al., “Knowledge Graphs as a source of trust for LLM-powered enterprise question answering,” J. Web Semantics, 2025.
[21]S. Yao et al., “ReAct: Synergizing reasoning and acting in language models,” ICLR, 2023.
[22]D. Li et al., “Smart city based on digital twins,” Computational Urban Science, vol. 1, 2021.
[23]S. Wolfert et al., “Big data in smart farming – A review,” Agricultural Systems, vol. 153, 2017.

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